Liminal Suite

Liminal Suite

2025.3.29 sat - 6.1 sun

時吉あきな

Akina Tokiyoshi

[English below]

この度 BnA Alter Museumでは、時吉あきな 個展『Liminal Suite』 を開催いたします。

本展タイトルである『Liminal Suite』とは、境界を表すLiminalと連続を表すSuiteを組み合わせた造語となっています。
これは、時吉あきなが制作で多用する「コラージュ」手法によって現れる 張り合わされた素材同士の切断面/境界の連続である作品そのものを表していると同時に、見慣れた場所が通常の文脈を欠いて提示されるネットミーム「Liminal Space」、そしてホテルである当館にちなんで構想されました。

そもそも20世紀キュビズム以降 美術の文脈において、「コラージュ」とは元の「糊で貼り付ける」こと以上に、他の領域(もしくは他の時間)に属していた諸要素を、新しい芸術のコンテクストに移すことを意味します。(*1)
この移動もしくは過渡的なタームが展開される場所が 本展『Liminal Suite』であり、時吉が過去/現在と制作を続ける作品群でもあるのです。

時吉によるコラージュ手法を用いた作品制作は2016年より始まりました。
現実の空間にある対象を写した複数の写真を素材として三次元的に貼り合わされ構成された立体や、それらを含むインスタレーション。
特にその中心となるペットをはじめとした小動物を再現する立体シリーズは、生活圏が近しくとも人ならざる対象を設定し、その対象が感覚する空間作品としても提示されるのです。ここでも時吉の、人から対象への感性的な移動に対する関心が顕になっていると言えるでしょう。

さて、本展では、これら対象の再現である立体作品を、再度撮影、プリントし現実に再配置・構成され再々撮影された写真作品「A・KU〜感」(≒亜空間)を中心に展示いたします。
これまでの立体作品のインスタレーションビューを自身で撮影していた感覚から着想を得て2024年からスタートしたという「A・KU〜感」シリーズは、これら立体作品に現れる表面と奥行きの微弱な振動をより象徴的に表していると言えるでしょう。
そもそも時吉の立体作品は、現実の二次元的切り抜きである写真から三次元立体を立ち上げる時、その映り込んだ対象が二次元的な面である以上、どうしても環境を含め余計に映り込んだ余剰と、逆に再現に必要な映り込んでいない不足を伴っています。
この余剰と不足の同居が顕著に現れる場所が「素材同士の切断面/境界」なのであり、その連続を通して鑑賞者の目は、作品の表面と奥行きで高速に移動=振動し亜空間への回路が繋がるのです。(*2)

本展キュレーター 筒井一隆

(*1) 河本真理「切断の時代 20世紀におけるコラージュの美学と歴史」ブリュッケ, 2007
(*2) 「Liminal Space」からインスパイアされた都市伝説「The Backrooms」では、現実世界での壁抜けバグによって空っぽなオフィスルームの迷路に迷い込んでしまう。この壁抜けバグとは、主にゲーム用語であり、代表的な例として操作するキャラクターが壁へと高速で衝突した時に衝突判定が行われず壁をする抜けてしまう現象のことを言う。


アーティストステイトメント

Liminal Suite 〜リミナル・スイート〜

現実から解き放たれた、完全なる自由空間。
そんなリゾートに訪れたとしたら、誰もがハッピーになれるのでしょうか。
私の制作する「A・KU〜感」シリーズでは、時間/空間のリミットを逸脱して、心ゆくまま、気の向くままの次元旅行へと出発したモノ(者・物)たちの行方を、「ファニー51:ホラー49」なムードでレポートしています。

サイエンス・フィクションの世界で度々出くわす「亜空間」という言葉。
未知への恐怖と憧れにいざなわれる、どこか逃避行的なその響きを身に纏うように、軽やかに、無反省に、野放図に生きられたなら。 誰しも、そんなA・KU〜感を心に秘めて暮らしているハズ。

異界への憧憬に囚われたとき、人はリミナル・スイートで目を覚まします。
あなたのポケットにも、すでにそのインビテーションは入っているのかも。

時吉あきな


時吉あきな個展 Liminal Suite
会期: 2025年3月29日(土)-6月1日(日)
会場: BnA Alter Museum 1/2F (京都市下京区天満町267-1)
開催時間: 11:00–20:00
入場無料/会期中無休

企画:筒井一隆
主催:BnA Alter Museum
※ 本展覧会はKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭サテライトイベントKG+ 2025に参画しています。

Akina Tokiyoshi Solo Exhibition: Liminal Suite
Period: March 29 (Sat) – May 1 (Sun), 2025
Venue: BnA Alter Museum 1/2F
Time: 11:00–20:00
Admission free / Open throughout the exhibition period

Curator: Kazutaka Tsutsui
Organized by BnA Alter Museum
*This exhibition is a part of KG+ 2025, a satellite event of KYOTOGRAPHIE Kyoto International Photography Festival.

BnA Alter Museum is pleased to present Liminal Suite, a solo exhibition by Akina Tokiyoshi.

The exhibition title Liminal Suite is a coined term that combines "liminal," referring to boundaries, and "suite," referring to a sequence or continuity. It represents not only the works themselves, which manifest through Tokiyoshi’s frequent use of collage techniques—layering cut surfaces and boundaries—but also draws inspiration from the internet meme "Liminal Space," which presents familiar places devoid of normal context, and from the hotel setting of the museum itself.

Since the Cubist movement of the 20th century, “collage” in the art context has come to mean more than simply gluing pieces together—it refers to the transfer of elements belonging to different domains or times into a new artistic context (*1).
The space where this transitional movement unfolds is precisely what defines Liminal Suite, and the works that Tokiyoshi has consistently produced across time are shaped by this idea.

Tokiyoshi began creating works using collage techniques in 2016. Her work includes three-dimensional constructions made by assembling multiple photographs of real objects and spaces into layered structures, as well as installations incorporating these.
Notably, her series of three-dimensional reproductions of small animals—often pets—demonstrates an interest in rendering non-human subjects that share our living environments, presenting spatial experiences from their sensory perspectives. This reveals Tokiyoshi's continued focus on emotional and perceptual shifts from human to object.

The exhibition centers on the photographic series A・KU~kan (≈Subspace), in which previously created three-dimensional works are rephotographed, printed, and reconstructed in physical space before being photographed again. Started in 2024, the A・KU~kan series is inspired by the artist's own experience photographing her installations, and seeks to symbolically emphasize the subtle oscillations between surface and depth found in her three-dimensional works. These works, built from two-dimensional photographic cutouts, inevitably carry both excess—unnecessary elements unintentionally captured—and lack—elements not captured but necessary for reconstruction. This coexistence of excess and absence becomes most apparent at the “cut surfaces / boundaries” between materials. Through these continuous boundaries, the viewer's gaze rapidly shifts and vibrates between surface and depth, forming a pathway into a subspace (*2).

Curated by Kazutaka Tsutsui

(*1) Mari Kawamoto, The Age of Discontinuity: The Aesthetics and History of 20th Century Collage, Brücke, 2007
(*2) In the urban legend "The Backrooms," inspired by the concept of "Liminal Space," a character glitches through a wall and ends up lost in a maze of empty office rooms. This "clipping" glitch, primarily a gaming term, describes a phenomenon where a character collides with a wall at high speed and passes through it due to failure in collision detection.

この度 BnA Alter Museumでは、時吉あきな 個展『Liminal Suite』 を開催いたします。

本展タイトルである『Liminal Suite』とは、境界を表すLiminalと連続を表すSuiteを組み合わせた造語となっています。
これは、時吉あきなが制作で多用する「コラージュ」手法によって現れる 張り合わされた素材同士の切断面/境界の連続である作品そのものを表していると同時に、見慣れた場所が通常の文脈を欠いて提示されるネットミーム「Liminal Space」、そしてホテルである当館にちなんで構想されました。

そもそも20世紀キュビズム以降 美術の文脈において、「コラージュ」とは元の「糊で貼り付ける」こと以上に、他の領域(もしくは他の時間)に属していた諸要素を、新しい芸術のコンテクストに移すことを意味します。(*1)
この移動もしくは過渡的なタームが展開される場所が 本展『Liminal Suite』であり、時吉が過去/現在と制作を続ける作品群でもあるのです。

時吉によるコラージュ手法を用いた作品制作は2016年より始まりました。
現実の空間にある対象を写した複数の写真を素材として三次元的に貼り合わされ構成された立体や、それらを含むインスタレーション。
特にその中心となるペットをはじめとした小動物を再現する立体シリーズは、生活圏が近しくとも人ならざる対象を設定し、その対象が感覚する空間作品としても提示されるのです。ここでも時吉の、人から対象への感性的な移動に対する関心が顕になっていると言えるでしょう。

さて、本展では、これら対象の再現である立体作品を、再度撮影、プリントし現実に再配置・構成され再々撮影された写真作品「A・KU〜感」(≒亜空間)を中心に展示いたします。
これまでの立体作品のインスタレーションビューを自身で撮影していた感覚から着想を得て2024年からスタートしたという「A・KU〜感」シリーズは、これら立体作品に現れる表面と奥行きの微弱な振動をより象徴的に表していると言えるでしょう。
そもそも時吉の立体作品は、現実の二次元的切り抜きである写真から三次元立体を立ち上げる時、その映り込んだ対象が二次元的な面である以上、どうしても環境を含め余計に映り込んだ余剰と、逆に再現に必要な映り込んでいない不足を伴っています。
この余剰と不足の同居が顕著に現れる場所が「素材同士の切断面/境界」なのであり、その連続を通して鑑賞者の目は、作品の表面と奥行きで高速に移動=振動し亜空間への回路が繋がるのです。(*2)

本展キュレーター 筒井一隆

(*1) 河本真理「切断の時代 20世紀におけるコラージュの美学と歴史」ブリュッケ, 2007
(*2) 「Liminal Space」からインスパイアされた都市伝説「The Backrooms」では、現実世界での壁抜けバグによって空っぽなオフィスルームの迷路に迷い込んでしまう。この壁抜けバグとは、主にゲーム用語であり、代表的な例として操作するキャラクターが壁へと高速で衝突した時に衝突判定が行われず壁をする抜けてしまう現象のことを言う。


アーティストステイトメント

Liminal Suite 〜リミナル・スイート〜

現実から解き放たれた、完全なる自由空間。
そんなリゾートに訪れたとしたら、誰もがハッピーになれるのでしょうか。
私の制作する「A・KU〜感」シリーズでは、時間/空間のリミットを逸脱して、心ゆくまま、気の向くままの次元旅行へと出発したモノ(者・物)たちの行方を、「ファニー51:ホラー49」なムードでレポートしています。

サイエンス・フィクションの世界で度々出くわす「亜空間」という言葉。
未知への恐怖と憧れにいざなわれる、どこか逃避行的なその響きを身に纏うように、軽やかに、無反省に、野放図に生きられたなら。 誰しも、そんなA・KU〜感を心に秘めて暮らしているハズ。

異界への憧憬に囚われたとき、人はリミナル・スイートで目を覚まします。
あなたのポケットにも、すでにそのインビテーションは入っているのかも。

時吉あきな


時吉あきな個展 Liminal Suite
会期: 2025年3月29日(土)-6月1日(日)
会場: BnA Alter Museum 1/2F (京都市下京区天満町267-1)
開催時間: 11:00–20:00
入場無料/会期中無休

企画:筒井一隆
主催:BnA Alter Museum
※ 本展覧会はKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭サテライトイベントKG+ 2025に参画しています。

  • 時吉あきな Akina Tokiyoshi

    1994年大阪府生まれ。2016年、京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科卒業。
    スマートフォンで撮影した対象の写真をコピー用紙に出力し、ほぼ原寸大の立体コラージュとして再現する作品を制作。平面の写真を強制的に立体にすることで、不自然な歪みや独特の表情を持つ複製物が生まれる。2018年「1_WALL」グラフィック部門グランプリ受賞個展「ナンバーワン」をはじめ、「ハム☆スター美術館で〇〇中!?」(東京都現代美術館、2020年)ワークショップ、「気になる中華料理店」(WHITEHOUSE、2022年)個展などを開催。
    国内外の美術展へ出品しながら、ABC-MARTやほぼ日などのクライアントワーク、お笑い芸人・金属バット主催のグループ展やオルタナティブロックバンド・GEZANのMV『誅犬』への作品提供、京都芸術大学非常勤講師なども務めている。

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